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8月 18, 2023

STUDIO R330 / POP UP STORE

STORE EVENT

エストネーション オンラインストアでは8/28(月)までご予約を承っております。


ロサンゼルスを拠点に活動するローラがクリエイティブディレクターを務める、ライフスタイルブランド【STUDIO R330(スタジオ アール330)】。イベントでは、エッセンシャルデニムコレクションに加え、新たにサスティナビリティとMADE IN USAにこだわったプレミアムデニムコレクションが登場いたします。

世界で最もエシカルでサスティナブルなデニムを生産するといわれている、サイテックスインターナショナルのロサンゼルス支社と開発段階からパートナーシップを組んで製作したプレミアムデニムコレクション。農薬の不使用に加え、環境再生型農業で作られた地球に優しいコットンとして知られているリジェネラティブコットンを使用したデニム地に、高級感と上品さのあるビンテージ加工を加え、細部のシルエットやディティールにもこだわっています。他にも、カシミア混オーガニックコットン糸を使用した上質なニットやオーガニックコットン100%のシャツ、リサイクルペットボトルから作ったトラウザーも展開いたします。

【以下注意事項を必ずご確認ください。】
※当ポップアップストアにローラさんご本人のご来店はありません。
※混雑状況により入場規制や入場整理券の配布、予約制とさせていただく可能性がございます。
※発売日当日、発売開始時に、急遽、販売方法を変更させていただく場合がございます。
※掲載内容、販売方法、商品内容は予告なく変更する場合があります。あらかじめご了承ください。
※「エコサイクル / ECOCYCLE® コラボレーションTシャツ」を数量限定で先行販売いたします。
※「プレミアムデニムコレクション」の数量限定先行予約、「コーティングコレクション」の先行予約を承ります。
※ご購入は1アイテムにつきお一人様一点限りとさせていただきます。

【エストネーション オンラインストアでの発売に関して】
8/1(火)11:00よりエストネーション オンラインストアにて以下アイテムを発売いたします。
○エコサイクル / ECOCYCLE® コラボレーションTシャツ(通常販売)
○プレミアムデニムコレクション(先行予約)
○コーティングコレクション(先行予約)
※ご購入は1アイテムにつきお一人様一点限りとさせていただきます。
※イベントの内容は予告なく変更する場合があります。

8/1 Tue. - 8/16 Wed.

六本木ヒルズ店・大阪店

8/1 Tue. - 8/28 Mon.

エストネーション オンラインストア

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2026/06/24

JOURNAL

人と環境、未来を紡ぐ。これからのサステナブルファッション

人と環境、未来を紡ぐ。これからのサステナブルファッション

篠原 諒太氏(経済産業省 製造産業局 生活製品課 課長補佐) 山下 大貴氏(経済産業省 製造産業局 生活製品課 課長補佐) 進行:竹山 賢(エストネーション サスティナビリティ開発推進室 室長兼ディレクター) ※2026年3月現在 衣服を身にまとう喜びや高揚感は、私たちの日常を豊かに彩ってくれます。しかし今、その衣服を生み出すサプライチェーンの裏側では、環境負荷の低減や深刻な人材不足、そして労働者の人権保護といった、待ったなしの課題が山積しています。 持続可能な社会に向けて、日本の繊維・アパレル産業はどのような未来を描き、どのように変わっていかなければならないのか。エストネーションでは2022年にサスティナブルプロジェクト「One Small for Smile」を本格始動し、同年7月からはサスティナビリティ開発推進室を立ち上げ、行政や生産現場と連携しながら、その課題解決に向けた歩みを進めてきました。前回2024年3月には、経済産業省の土川氏をお招きし「資源循環システムの構築」について伺いましたが、今回はそこからさらに一歩踏み込みます。 2024年秋、経済産業省においてサステナビリティに関する議論の中間取りまとめが行われました。環境対応が宣言から実装へと進む中、もう一つの極めて重要な柱となっているのが、深刻な人材不足に対応するための人権デュー・ディリジェンスへの取り組みです。日本のモノづくりを守るために、国はどのような施策を行っているのでしょうか。そこで、「繊維アパレル産業の現状と人権デュー・ディリジェンスの取り組みについて」をテーマに、経済産業省 製造産業局 生活製品課の篠原 諒太(しのはら りょうた)氏、山下 大貴(やました だいき)氏をお招きし、エストネーション サスティナビリティ開発推進室 室長兼ディレクターの竹山 賢(たけやま さとし)が進行役となってお話を伺いました。 経済産業省が描く「繊維ビジョン」と3省庁の連携 竹山:前回は資源循環について伺いましたが、今回はその後の環境対応への進捗と、繊維業界の深刻な人材不足、そして人権デュー・ディリジェンスの取り組みについて教えていただけますでしょうか。まずは、日本の繊維産業の現状と国が描く方針についてお願いします。 篠原 諒太氏(以下、篠原):経済産業省では、2022年5月に産業構造審議会 繊維小委員会の議論を経て、「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)を策定いたしました。ここでは、新市場開拓のための分野を「戦略分野」、サステナビリティやデジタル化などのビジネスの前提となる分野を「横断分野」と位置付けて政策を推進しています。 出典:経済産業省「2030年に向けた 繊維産業の展望 概要資料」 戦略分野では、海外展開による新たな市場獲得や、技術開発による市場創出、そして繊維産地間の連携等を通じた新たなビジネスモデルの創造を目指しています。日本の繊維産業が今後海外を目指してジャンプアップするためには、足腰となる基盤を固めることが不可欠です。そこで、横断分野として環境対応(資源循環の取り組み強化)や人権デュー・ディリジェンス(責任あるサプライチェーン管理の促進)を含むサステナビリティの推進と、デジタル化の加速を掲げています。この環境と人権という2つのテーマは、サステナビリティの取り組みとして並行して進めていくべき重要な要素と位置付けています。 しかし、これらの推進は経済産業省のみで達成できるものではありません。2021年に政府内でサステナブルファッションの推進が打ち出されて以降、関係省庁連絡会議を設置しました。生産・流通を担う経済産業省、廃棄・循環を担う環境省、そして購入・使用段階で消費者の皆様に価値をお伝えする消費者庁の3省庁が緊密に連携し、事業者及び消費者の双方に向けた取り組みを計画的に進めています。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 数字で見る市場の動き 日本の強みはここにある! 山下 大貴氏(以下、山下):日本の繊維産業の現状についてデータに基づきご説明します。国内の衣料品等の市場規模は、1990年の15.3兆円をピークに減少傾向にあり、2024年時点でも7.4兆円と、コロナ禍前の水準に回復していません。国内生産量についても、長年右肩下がりの状態が続いており、モノづくりの事業所数や就業者数も2000年代頭から半減程度に縮小しています。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 しかし、ここで注目すべき特異なデータがあります。市場規模と生産量が落ち込んでいるにもかかわらず、国内のアパレル供給点数は1990年の約20億点から2024年には約35.1億点へと、約1.7倍に増え続けているのです。この背景にあるのが、極めて高い「輸入浸透率」です。2024年の輸入浸透率(国内供給量に占める輸入品の比率)は数量ベースで98.6%に達しており、裏を返せば、日本国内で最終縫製を行っている製品の割合はわずか1.4%に過ぎないという構造になっています。 他方、日本の繊維産業にはまだまだ開拓できる未来、明確な活路が存在していると考えています。その根幹を支えているのが、日本各地にある産地の存在です。日本のモノづくりを紐解くと、糸は専門の工場で紡がれ、そして各地の産地がそれぞれの特色を活かした素晴らしいテキスタイル(生地)を生み出しています。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 2024年の主要国における繊維・繊維製品輸出内訳を見ると、日本からの輸出額は1兆円を超えています。フランスやイタリアは最終的な製品(衣料品)の輸出割合が高いのに対し、日本の輸出品目は生地(3,189億円)や糸(1,313億円)、二次製品(不織布など1,319億円)など、素材の占める割合が非常に大きいのです。日本のテキスタイルは、世界市場において確固たる競争力を持っているといえます。 しかし、現在その産地では人が減り続け、多くの深刻な課題を抱えています。職人の高度な技術をどうやって次世代へ承継していくか、若手の人材をどう確保していくか。さらには、小規模な工場ではデジタル化が遅れているために、せっかくの需要があっても発注がうまく取れないといった現場の悩みや、分業制で成り立っているがゆえに「産地からある1つの工程(例えば特定の加工など)を担う工場が無くなってしまい、産地全体でのモノづくりが立ち行かなくなってしまった」といった危機的な事態も起きています。 経済産業省としては、繊維ビジョンの中で新たなビジネスモデルの創造を掲げていますが、こうした個々の切実な課題に対して、日本全体でどう対応していくかという議論をしっかりと進めなければなりません。産地のモノづくり能力を維持するだけでなく、さらに強くしていく、サプライチェーンの強靭化が急務なのです。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 かつ、そのためには国内市場の縮小を補うべく、海外の需要(外需)もしっかりと獲得していく姿勢を見せていく必要があります。産地の皆様と連携することはもちろん、アパレル企業の皆様にも、日本製品の良さ、日本のテキスタイルの価値をいかに海外へ打ち出していくかという取り組みにご協力いただき、市場を広げていくための後押しをしていきたいと考えています。 竹山:エストネーションでも、日本の産地と協業した「ESTNATION JOURNEY」シリーズを企画し、店頭で展開しています。我々のような小売やアパレルが産地の方々のリアルな課題を知り、日本の優れたテキスタイルを製品という確かな価値に昇華させてお客様にお届けすることは、まさに今おっしゃったサプライチェーン強靭化の一翼を担う取り組みになっていると嬉しいなと思いました。 環境へのアクションは、宣言から実装のフェーズへ 山下:次に、環境対応についてお話しします。環境対応というと、ビジネスの現場では「お金にはならないけれど、やらなければならないコスト」と捉えられがちです。しかし、少し視点を変えてみてください。日本の繊維産業は、今後市場を求めて海外へ出て行かなければなりません。海外で競争力を担保して仕事をしていくためには、環境への取り組みは絶対に避けられない軸になります。 現在、繊維産業は一部からは世界から第2位の汚染産業と指摘されたこともあり、環境に良いものが求められる流れは日々強まりつつあります。例えば欧州では、域内を流通するほぼすべての製品にエコデザインを要求する、エコデザイン規則という法律ができつつあります。そうなれば、今パリに納めているような製品が流通できなくなる可能性があります。このような動きが全世界に広がる中、日本だけが独自のルールでガラパゴス化しているわけにはいきません。日本が、「サステナブルかつ、資源循環がしっかりと回っている」国になり、かつそれを対外的に示していくことこそが、アパレル産業の競争力強化に直結するのです。 2年前の前回対談では、国としてのロードマップをご紹介し「2030年までにこれをやります」と宣言をしました。しかし、頑張ろうとだけ言っても、結局、何をするのかという話になります。そこで今回は、この2年間でよりリアリティを増し、具体的な実装へと進んだ進捗をいくつかお伝えします。 出典:経済産業省「繊維製品における資源循環ロードマップ」 1つ目は、繊維to繊維リサイクルの本格的な始動です。衣服を再び衣服に戻す上で最大のハードルとなっているのが、綿やウール、ポリエステルなどが混ざった複合素材の存在です。皆様のクローゼットにある服は、1つの糸だけで作られている製品は少なく、大半の服は素材が混ざり合っています。そこで複数の素材が混紡されている回収衣料品が循環できるようリサイクル技術の研究開発が進められています。 現在、国内の主要な繊維メーカーが中心となり、経済産業省とも連携して「繊維to繊維 資源循環構築コンソーシアム(CFT2)」が設立されています。国としても「バイオものづくり革命推進基金事業」などの予算を投じ、この資源循環システムの構築に向けた研究を実装しようとしています。現在手放されている衣料品のうち5万トンを繊維to繊維でリサイクルするという目標に向け、5年後、10年後にはこうした仕組みが目の前で当たり前に動いている状態を作りたいと考えています。 2つ目は、リサイクル製品の市場創出です。リサイクルを進めても、それを誰が買ってくれるのかという大きな壁があります。そこでまずは国がリサイクル製品を率先して購入する枠組み(グリーン購入法)の調達基準を見直しました。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 3つ目は、情報流通プラットフォームの構築です。現在の服のタグには、その1着を作るのにどれくらいCO2を出したのかといった細かな環境配慮情報は書かれていません。環境に良いものを買いましょうと言っても、誰もその情報を見ることができないのです。かといって、製造工程が極めて多岐にわたる繊維産業において、データをバケツリレーのように渡していくことは、アパレル企業にとって多大な負担になります。 そこで、原料から最終製品、そして回収に至るまでの情報をデータでシームレスにつなぐプラットフォームの構築を進めています。このデータ基盤ができれば、海外の厳しい規制対応がスムーズになるだけでなく、回収事業者がリサイクルできる素材かどうかを瞬時に判断できるようになります。さらに、民間事業者の取り組み次第にはなりますが、競争領域として更なる取り組みを進めていただくことで、資源循環の枠を超えて、「これは日本で作られたものである」「日本のテキスタイルがどのような価値を持っているか」といった情報も載せられる可能性があり、日本のモノづくりの競争力強化にも大きく寄与すると考えています。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 竹山:現在、家庭から手放されて回収されている衣類の約7割が複合素材であると言われています。エストネーションの商品も、お客様にご支持いただく上質な着心地や機能性、ストレッチ性などを追求した結果、必然的に複合素材が多くなっています。それゆえに、単一素材だけでなく、最もハードルの高い複合素材の繊維to繊維リサイクルに向けたコンソーシアムの設立は、我々アパレル業界にとって技術的な裏付けを伴う非常に大きなニュースでした。 山下:まさにそうした技術基盤を日本がしっかりと確立することで、日本の中で資源が回せるようになることを期待しており、このような観点からも、行政と業界の皆様が一体となってこの活動を進めていくことは不可欠だと考えています。 ファッションの裏側にある人権の課題と向き合う 篠原:続いて、話題は変わりますが、外国人材の受け入れと、日本の人権デュー・ディリジェンス(人権対応)の状況についてご説明します。 最初にお話しした通り、サステナビリティというと環境問題ばかりが注目されがちですが、環境と人権は両輪であり、並び立って初めて成立するものです。欧州での企業の情報開示などにおいても、環境対応と並んで人権への配慮が当然のように求められるようになってきています。 少し歴史を振り返りますと、繊維産業における人権問題は国際的にも多く取り沙汰されてきました。2013年にバングラデシュで起きたラナ・プラザ崩壊事故が一つの大きな契機です。繊維産業は非常に労働集約的で、人が集まってミシンを踏むといった単一の作業工程が多く、劣悪な環境下で働かされていたゆえに多数の方が亡くなるという痛ましい事故が起きました。最近でも、中国・新疆ウイグル自治区の綿花に関する報道が国際的な注目を集めました。 こうしたニュースを聞くと、遠い海外の話だろうと思われるかもしれませんが、残念ながら、過去の日本の繊維産業においても、外国人技能実習生の人権に関わる違反が顕在化し、大きな問題となっていた時期がありました。 日本には「技能実習制度」という制度があります。この制度は途上国の人材を我が国で育て、技術を学んで現地に戻って活躍してもらうという国際貢献を目的としたものです。現在、日本全国で約45万人の技能実習生が様々な産業で働いており、そのうち繊維・衣服関係では約2万6000人の方が働いています。 問題は、過去に繊維業界で違反の事例が非常に多かったことです。2017年のデータを見ると、不正行為が発覚した機関(監理団体型)183件のうち、繊維・衣服関係が94事業所を占めていました。全体の実習生数に占める繊維の割合はわずか約6%であるにもかかわらず、違反があった機関の占める割合は51%に達しており、大きく問題視されました。 大きな要因として、縫製工程が多い繊維産業では、春夏物と秋冬物で年2回、生産のピークが立ちます。この残業が増える繁忙期のタイミングで、実習生が付けたタイムカードを書き換えて違法な長時間労働をさせるといった違反が、他の産業と比較し多く行われていたのです。もちろん、業界全体が悪かったわけではなく、一部の事業者が摘発の多くを占めていたわけですが、実態としてこうした状況がありました。 そのため、「これほど技能実習生の人権に違反している繊維業界に、実習後に日本の労働力として働き続けられる特定技能制度を活用させることなど到底認められない」とされ、過去5年ほど制度の対象として認められない状況となっていました。 業界の浄化と、新たな労働力としての特定技能 篠原:他方で、適切に制度を運用している多くの事業者からすれば、深刻な労働力不足の中で外国人材を雇いたいという切実なニーズがあります。そこで、まずは業界として違反を減らしていこうと、日本繊維産業連盟という業界団体を中心に、経済産業省の検討会も踏まえて「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」を策定しました。 各企業がこのガイドラインにコミットして人権の取り組みをしっかり行った結果、ピークの2017年には51%だった違反割合が、足元では約20%にまで改善してきました。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 こうした改善努力が認められ、ついに繊維産業も新しい特定技能制度の対象として追加されました。これまでであれば、技能実習を終えたら母国に帰らなければならなかった人材に、引き続き最長5年間(更新を含めればそれ以上)、日本の労働力として活躍していただくことが可能になったのです。事業者から見れば、同じ人材に最長10年間活躍してもらえるようになり、人材不足を補うという観点からも少しずつ進捗が見られるようになってきました。 竹山:エストネーションでも、人権の取り組みに着手した際、技能実習や特定技能、育成就労といった言葉が出てきたのですが、最初はなかなか理解が広がりませんでした。しかし今のお話を伺って、これまでの技能実習制度が国際貢献という意味合いだったことに対して、現在は業界の人材不足を補うために技能を持った方々に日本で働いていただく制度へと変わってきた。そもそも制度の目的が違っていたのだと腹落ちすると、現在産業が置かれている難しさや課題の輪郭が見えてくる気がします。 篠原:ありがとうございます。まさにそうした中で、これまでのような国際貢献としてだけでなく、日本の労働力として活躍していただく特定技能制度の対象になりました。しかし他方で、「過去に違反していたのに、繊維産業は本当に適正に外国人材を雇用できるのか。他の産業より悪さをする可能性が高いのではないか」という厳しい目で見られてしまっているのも事実です。そのため、この新しい外国人材制度の活用に際しては、他の産業にはない4つの厳格な追加要件が繊維産業にだけ課せられています。その要件の1つ目、筆頭に挙げられているのが、「国際的な人権基準に適合し、事業を行っていること」です。これが、まさに人権デュー・ディリジェンスの取り組みに大きく関わってきます。 竹山:なるほど。つまり、繊維産業では過去に色々な問題があったため、他の産業にはないペナルティのような形で追加要件を満たすことが課せられたわけですね。そして、その筆頭要件の「国際的な人権基準に適合していること」という抽象的な内容を具現化し、証明する仕組みとして国が定めたのが、次に説明していただく「JASTI」になってくるわけですね。 日本発の監査基準「JASTI」の誕生 篠原:次に、我々が策定した人権デュー・ディリジェンスの監査基準「JASTI」について、もう少し詳しくお話しします。元々このJASTIの検討は、外国人材の制度とは別の文脈、純粋なサステナビリティの取り組みとして始まりました。国際的なブランドと取引のある工場などから、「環境や人権の監査のために、毎年何種類もの異なる監査が入り、その対応だけで現場が疲弊している」という切実な声が寄せられていたのです。そうした実情を踏まえ、日本として訴求力のある統一的な監査制度を作り、これを取得していれば他の監査は受けなくて済む、という大きな理想(ビジョン)を掲げ、日本の実態に即した人権デュー・ディリジェンスの仕組みとして「JASTI(Japanese Audit Standard for Textile Industry)」を策定するに至りました。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 JASTIの制度を検討している最中に、ちょうど特定技能制度の議論が進み、「国際的な人権基準に適合すること」という厳しい要件が課せられることが見えてきました。もちろん、「国際的な人権基準に適合すること」を満たすための認証は「GOTS」や「GRS」など他にも存在します。しかし、国内でこれまで認証を受けたことがない小規模な事業者が、いきなり英語の書類を読み込み、海外の監査員とコミュニケーションを取るというのは、実態として非常にハードルが高い。 そこで、国が定めるこのJASTIを要件の対象に加えることで、外国人材の受入れに向けた追加要件をクリアしつつ、元々の目的であったサステナビリティに取り組んで海外での競争力を維持するという両方の条件を同時に達成できるのではないかと考え、制度を構築しました。 厳格さと優しさを兼ね備えた、日本独自の監査項目 篠原:JASTIの監査要求事項は、大きく分けて9分類、細かく見ると約130項目に及びます。強制労働や児童労働の禁止、適切な賃金の支払いなど、国際認証の人権部分を網羅できる水準に設定しています。特徴的なのは、日本の労働法規に基づく独自の厳格な基準を含んでいる点です。例えば、労働安全衛生の項目では、避難する時の扉は押し戸であることと定めています。人が殺到した時に引き戸では開きませんし、スライドドアは地震で建物が歪んだ際に開かなくなるリスクが高いからです。このように、労働者の命を守るために日本の労働法規を超えた規定も含んでいます。 一方で、最初から難しすぎると誰もチャレンジできなくなってしまうため、中小の工場でも取り組みやすいよう現実的な優しさも設計しています。例えば、初回監査は、継続的な改善を促すことを目的とし、工場の建屋の改修などすぐには対応が難しい項目については、判定への影響を軽微にしています(1回目は少し点数が悪くても合格しやすくし、2回目以降で基準を厳しくしていく仕組みです)。 このJASTIの運用はすでに始まっており、繊維関係の検査機関や全国の社労士の方々が現場に赴いて監査を行っています。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 最近では460〜470ほどの事業所(対談時点)が受審し、その多くがAまたはB判定を取得しています。なお、監査で指摘される事項としては、やはり先ほどの「扉がスライドドアになっている」「ミシンの安全ガードを外してしまっている」といった労働安全衛生に関するものが多くなっています。 日本のモノづくりを守るために、私たちができること 竹山:少し難しいお話もありましたが、我々アパレルや小売にとって非常に重要な内容でした。国がJASTIという立て付けを作ってから、すでに500近い事業所に運用が開始されているというのは、世界的に見てもかなり珍しく、驚異的なスピードだと伺いました。 出典:経済産業省「繊維アパレル産業の現状と人権デューディリジェンスの取り組みについて」 繊維産業は過去の違反から厳しい追加要件を課せられるような難しい状況もありましたが、こうした国の制度を生産現場がいち早く受け入れ、浸透を図れるというのは、やはり日本のモノづくりの真面目さ、素晴らしさだと感じています。 人権というテーマは、時に耳が痛い問題も含まれます。しかし、環境への配慮とともに、これからは当たり前のように取り組んでいくべきものだと理解しました。 山下:産地のリアルな課題は、人が減り、工程の一部が欠落してしまうと、産地全体でのモノづくりが崩壊してしまうということです。これを防ぐためには、産地の方々が適正な価格で稼げるようになることが必要です。稼げる産業にならなければ、後継者は育ちませんし、投資も生まれません。そのためには、発注する側(アパレル・小売)も、作る側(産地)も、「この製品の本当の価値はどこにあるのか」「どこで、どのように売っていくべきなのか」をともに考えなければなりません。環境や人権に配慮したサステナブルなモノづくりは、今後海外市場で生き残るための最低限のパスポートになります。 グローバルな変化に揺るがない方針と、産地のリアル 竹山:サステナビリティへの取り組みが必須となる一方で、昨今の世界的な情勢より、環境や人権への取り組みが後退するのでは、という懸念の声も聞かれます。こうしたグローバルな変化に対して、国としてはどうお考えでしょうか。 山下:各国による自国優先の産業政策の展開といった新たな国際秩序が生まれようとしている動きはあることは事実です。一方、気候変動や過酷な労働環境といった問題自体が消え去るわけではありませんし、全体としてグリーンや人権を重視する市場は確実に拡大し続けています。この新しく生まれる市場を一足先に獲得していくことこそが、今後の産業の競争力に直結すると理解しているところでありますので、日本の繊維産業のサステナビリティに関する基本方針は、少なくとも現時点において揺らぐことはありません。 竹山:それは非常に心強いお言葉です。国の方針が揺るがないからこそ、日本のモノづくりの根幹である産地をどう守るかが我々にも問われますね。都会で消費者に接していると、産地の人手不足や事業承継の危機といったリアリティをなかなか実感しにくい部分もあります。 山下:中小企業全体の事業承継問題はかなり前から言われておりますが、繊維産業は他産業よりももっと早く、まさに今この瞬間に危機が訪れています。従業員の平均年齢も高く、統計を見ると、事業を引き継ぐ気がないという中小企業の割合も突出しています。例えば、ある産地で特定の加工を担う職人が3人しかおらず、「2人が辞めるなら、残る1人では到底回しきれないから一緒に辞めよう」となったとします。こうしたことが起きるだけで、産地全体でのモノづくりが根底から立ち行かなくなってしまいます。 こうしたことを防ぐためには、産地全体で連携し合うことはもちろんのこと、作る側(産地)は自分たちの技術や素材の価値を発注する側(アパレル・小売)へ正しく提示し、発注する側はその背景にある価値を消費者へとしっかり伝える必要があります。こうした両者のコミュニケーションを通じて、産地が不当に買い叩かれることなく、適正な価格でしっかりと稼げるビジネスモデルを作らなければなりません。稼げる産業にならなければ、後継者は育ちませんし、未来への投資も生まれないと思います。 ファッション産業の誇りと、ともに創る未来 篠原:行政としても、この繊維・アパレル産業の持つ社会的意義は非常に大きいと感じています。一度リタイアされた方や子育て中の方をふくめた様々な方が再び働きやすく、地域雇用を支える基盤として、これほど意義深い産業はなかなかありません。日本のファッション産業がこれからも日本を牽引する力を持てるよう、我々も悩み、考えながら、現場の実情に即した枠組み作りを進めてまいります。本日のような対話をひとつのきっかけとして、今後もぜひ連携させていただければ幸いです。 竹山:アパレル産業は、数十万人が就労し、そのうち女性が約6割を占め、65歳以上の高齢者も多く活躍されている、地域や社会を支える非常に大切な産業です。年齢や性別を問わず働けるこの素晴らしい産業の課題に対し、行政の皆様が大きな枠組みを作り、持続・発展できる道筋を示してくださっていることに深く感謝いたします。我々も、小さなところから実践を積み重ねていくことで、必ず未来が見えてくると確信しています。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。 プロフィール 右 山下 大貴氏(経済産業省 製造産業局 生活製品課 課長補佐) 2022年東京工業大学大学院(物質理工学院)卒業後、2022年経済産業省入省。主に中小企業、エネルギー関係に従事し、24年7月より現職。係長を経て、現在は同課 課長補佐。 日本の繊維・アパレル産業における資源循環システムの構築や、環境配慮等のサステナビリティ政策の推進をはじめとするに、生活製品産業の振興に関する企画立案を担当。(2026年3月時点) 中央 篠原 諒太氏(経済産業省 製造産業局 生活製品課 課長補佐(企画)) 篠原補佐 2015年新潟大学経済学部卒業後、2015年経済産業省入省。主に中小企業、エネルギー関係に従事し、24年8月より現職。 現在は同課 課長補佐として、繊維産業におけるサステナビリティ推進、特に外国人材の受け入れ制度や、人権デュー・ディリジェンスの適正取引に向けた監査基準「JASTI」の構築などを牽引している。(2026年3月時点) 左 竹山 賢(エストネーション サスティナビリティ開発推進室 室長兼ディレクター) 1998年3月 成蹊大学法学部法律学科 卒業。 2007年11月 株式会社エストネーション 入社。 2022年8月 販売部を経て、現職。 2/9 Fri. - 4/24 Wed. 大丸心斎橋店5階 --> オンラインストアはこちらから ONLINE STORE --> ※イベントの内容は予告なく変更する場合があります。 あらかじめご了承ください。 ※詳細はスタッフまでお問い合わせください。 お問い合わせは コールセンター TEL:0120-503-971 (11:00~20:00) メールフォームでのお問い合わせ -->